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桃井はるこ「ヲタクは最後のロックなんです!」

momoi_2.jpg桃井はるこが「萌えはろっくだ!」として提示したことはひとつの音楽的革命だったが、彼女は今、さらなる革命を成し遂げようとしている。この社会を覆う閉塞感や抑圧、そうした敵に向かって彼女は一人、時にはファンという同志と共に日々闘っている。彼女の武器はショルダーキーボードとパワーグローブ。桃井はるこの「萌え革命」がヲタ達のパワーを解放し続ける限り、世界とアキハバラの平和は守られるのだ。(取材・文/加藤梅造 撮影/北村ヂン)
*誌面に掲載しきれなかったインタビュー完全版を公開!



★やっぱり現場が一番好き!★

──ロフトプラスワンで初のトークライブ「はるこの秘密」をやったのが1996年ですから、もう12年前なんですね。
 ロフトプラスワンは今でも原点としてありますね。ロフトプラスワンができる前って、音楽のライブハウスはあったけど、喋ったり議論したりするためのライブハウスってなかったじゃないですか。私はそれまで、普段自分が喋ってることなんて誰にも理解されないと思ってたのが、トークライブをやってみたらすごくみんなに喜んでもらえて驚いた。ライブってその場にいる人だけが分かる共通のことを体感できるのが、すごく貴重だなって思いました。
──しかもはるこちゃんのトークライブって必ず朝までやってましたよね。
 それでも時間が足りなかったぐらいで(笑)。あと、私のイベントに来たことがきっかけで友達ができたりとか、一緒に会社を作ったとかいう人もいて、ある種、ドラクエに出てくる「ルイーダの酒場」的な機能も果たしていたと思います。
──トークライブもそうだけど、はるこちゃんは昔から現場主義というか、場数を踏んでナンボみたいな所がありますよね。
 ありますねー。やっぱり現場が一番好きなんですよ。その場だけの1回限りな感じが。
──先日、武道館でのライブ映像を見たんですが、お客さんとの距離感が異様に近くて、とても広い場所とは思えなかった。
 そう! 私もやってみてそう思った。「ライブハウス武道館へようこそ!」みたいな(笑)。大きい会場でも小さい会場でもいい意味で変わらないでいたいと思います。
──はるこちゃんの最初の現場体験って、やっぱり水野あおい(*1)のライブですか?
 そうですね。あおいちゃんのライブとかラジオの公録とかよく行きました。昔からライブが好きで、アイドル以外でも、電気グルーヴとかスチャダラパーとか普通に観に行ってたんですが、あんまりそういう話をする機会がないですね(笑)。
──今、アキバ系の音楽シーンが盛りあがってきて、はるこちゃんが秋葉の女王って呼ばれるようになってますが、その源流には「水野あおい」があったってことはもっと評価されるべきですよね。
 水野あおいはロックですよ! 当時は観月ありささんとか牧瀬里穂さんとか、元モデルの歌手がカッコいい時代で、アイドルが歌うなんて超絶にダサい! って思われてた。そういう時代に、水野あおいさんがライブハウスやサンシャイン噴水広場でイベントをやってた事は、ある意味パンクだったと思う。
──集まってくるお客さんにも独特の文化があって、今で言うヲタ芸が生まれたのもそういう所からですよね。
 PPPHとかサイリュームの色を揃えるとか当時からありました。お客さんと一緒にライブを作っている感覚がありましたね。
──はるこちゃんは、90年代の「アイドル冬の時代」にひっそりとあった、誰も知らない歴史の貴重な証人でもありますよ。
 幸運にもあの頃にミニコミとかを作ってた人の資料があるから、そういう歴史があったことが今でもわかりますが、それがなかったらどこにも記録されずに忘れ去られてたかも!? まさに現場主義とも言えますが、水野あおいさんは決して一般的に知られている人ではなかったけど、その場にいる人をすごく感動させることができるというのが凄かった。周りで何が流行っているかに関係なく、自分がやりたいからアイドルになって、アイドルを貫いて、そして去っていった水野あおいは、やっぱり超カッコいいんですよ。
──バリバリのアイドルファンだったはるこちゃんが今やアイドルになってるわけですが、きっかけは何だったんですか?
 ミニコミを作ったり、サイリュームを揃えたり、はっぴを着たりとかいろいろある中で、そういう面白い空間を作るために私は何ができるんだろうと考えた時に、自分で曲を作って歌うことで、みんながそれぞれの盛り上がりをしてくれる、そういう場を作れることが自分にとって一番面白いなと思った。だから今でもお客さん目線でやってるんだと思います。
──「しでかし」もありみたいな?
 そうですね。悪意がなくて楽しいことなら何でもOKだと思います。自由なのが一番。


★人前で歌うのって楽しい!★

──さて、以前に「もあいはるこ」(*2)や「AceFileくしよし」」(*3)をプロデュースしたように、今でもアイドルプロデュース的なことをやりたいと思います?
 やりたいし、やっぱり今でも作家志望なところはあります。ずっとアイドルファンだったので、自分がステージの真ん中に立って歌うことには違和感がありました。以前にPerfumeさんとご一緒した企画(*4)の時も、自分は裏方のつもりだったので、ジャケット写真に写るのも最初は遠慮してたんです。昔からアイドルに曲を提供する人に憧れていて、高校生の頃は、小室哲哉さんみたいなプロデューサーがすごくカッコいいって思ってました。このアーティストにはこういうストーリーがあって、こういう曲を歌わせるみたいな。だからずっと作家志望ではあるんですけど、去年ぐらいからだんだん自分で歌うのも悪くないなあと思うようになった(笑)。
──えっ、去年なんですか!?
 UNDER17(*5)をやってた時でも、いずれ自分は裏方になってライブを見る側になると思ってたんです。それが去年、アメリカ最大のアニメイベントである「Anime Expo」に出た時に、すごいたくさんの人が私の曲を聴きに来てくれたことに感激して、ああ、人前で歌うことはすごくいいなと。その後、武道館のアニメロ・サマーライブで「ワンダーモモーイ」を歌った時に「人前で歌うのって楽しい!」と改めて思ったんです。今まで自分のライブでは、もう一人のディレクター的な自分がいて、今回はこういうテーマでこういう曲をとかいつも考えていたんですが、DVD(『[Sunday early morning LIVE]@SHIBUYA-AX』)にもなった今年4月のライブの時は、そういうことを考えずに単なる出演者としてステージに出て行って、あとは何が起こってもいいやぐらいの気持ちでやったら、逆にそれがよかった。
──武道館での「ワンダーモモーイ」はすごい盛り上がりでしたが、この曲自体、はるこちゃんにとってすごく転機になった曲ですよね。
 やっぱりUNDER17を解散した時はとても心細かったし、具体的にどうしようか悩んでる時期だったんです。その時、ナムコさんから「ゲーム『ワンダーモモ』のBGMに合わせて『ワンダーモモーイ』っていう曲を歌いませんか?」というメールをいただいて、ああ、これは最高の仕事だなと思って一生懸命やったんです。例えば、水野あおいの曲に「あおい伝説」っていう彼女のテーマ曲があるんですが、私にはそれまで「モモイ」とか「はるこ」っていう歌詞が出てくる曲はなかったんです。でも「いらないか、自分で作るのも変だし」と思ってたのが、計らずも「ワンダーモモーイ」がそういう曲になってくれて、なんか運命的なものを感じましたね。


momoi_3.jpg★ヲタクは最後のロック!★

──「ワンダーモモーイ」に続くのが「さいごのろっく」ですが、これもまた桃井はるこの代表曲と呼べる素晴らしい作品です。ある意味、新境地とも言える曲ですが。
 ソロになって初めて、こういう曲を作れるようになったんです。それまでは美少女ゲームの主題歌ということで恋愛の曲が多かったんですが、それもいいけど、やっぱり自分の中にグログロと思っていたこともあって、それをようやく外に出すことができた。
──この曲は桃井はるこのマニフェスト的な曲でもありますね。
 「さいごのろっく」の意味は「ヲタクは最後のロック」ということなんです。私より上の世代にとってのロックは不良の音楽だったと思うんです。でも今は、ロックと言われている曲なのに「君は一人じゃない」みたいなことを歌ってたりして、それは私の中でのロックじゃない。「えー! それがロックなの?」みたいな。
 一方、ヲタクっていうのは、いまだに世間的には、気持ち悪いとか、犯罪予備軍とか言われていて、美少女ゲームやフィギュアが部屋にあると「うちの子は大丈夫か」って親から本気で心配されるような存在。でもヲタクの鬱屈というか、たとえ“大人”に理解されなくてもオレはこれが好きなんだー! っていう衝動は、本来の意味でロックだと思うんです。特に最近、ヲタクへの偏見を助長するような社会になってきてると感じるので、そういう時だからこそ、私はライブに来てくれる人に「それでいいんだよ!」と言いたい。
 例えばテレビの報道番組でも、何か仮想敵を作ってそれを攻撃することで自分たちはそうじゃなくてよかったって安心している。すごく痛ましい事件や事故でも、被害者はこんなふうに殺されましたとか、なんでそこまで詳細に報じる必要があるのか? って疑問に感じるような報道が多い。結局、自分がそうならなくてよかったって思ってるだけだろうって、すごく腹が立つんです。だから……なんて言ったらいいのかわからないけど、「私のライブにはまともな人が来てくれて嬉しい!」(笑)。へんな言い方ですけど、まともな人は私の事をわかってくれてると思うんですよ。私がボロボロのメイド服を着たり、コスプレしてたり、端から見るとただの萌え萌えアイドルでしょ? って思われても、私の中にある本質みたいなものをちゃんとわかってくれる人がライブに来てくれてると思うんです。だからライブがとってもいい空間になっているのが本当にありがたいですね。


★はやくみんなに聴いてもらいたい!★

──8月27日に新曲「Feel so Easy!」が発売されるんですよね。アニメ番組『Mission-E』のEDテーマ曲ということですが、これは意識的に80年代歌謡にしたんですか?
 超80年代ですよ。シモンズ(シンセドラム)の音を入れたくて作ったんです。シモンズのポン、ポン、ポン、ポンという音を嬉しそうに使ってる感じがやりたかった。
──CCBとかを思い浮かべました。
 それもそうですが、本命はTOMCATです。私のバイブルですから! 『Mission-E』という作品はいい意味で私が見て育ってきたアニメの雰囲気があるんです。ちょっと昭和っぽいというか、どこか懐かしいアニメなんです。それで80'sっぽい感じがいいかなと。ライブで昔のディスコみたいに「フー!」とか「フウ、フウ、フウ」って盛り上がれるように作ってます。あと、カップリングもいい曲ですよ。「天空のスプライト」って言うんですが、スプライトっていうのは宇宙に一瞬、稲妻みたいな光が見える現象があるらしくて、その形が妖精のようにも見えるというものなんです。私、6月は個人的にも世間的にも落ち込むことが多かったんです。ものすごく暗い気分になった時って、ある時点で感情がひっくり返るというか、一気に前向きになる瞬間があるんです。まさにスプライトとでもいうような、目の前に光がパアーって広がる感覚になって「落ち込んでる場合じゃない。やらなければ!」っていう状態になるんです。それで一気に作ったのがこの曲ですね。2曲ともすごくいいので、はやくみんなに聴いてもらいたいです!


(脚註)
(*1)水野あおい──元祖ライブアイドルとも言える、ライブを中心に活動したアイドル。アイドル冬の時代と言われる1992年デビュー。2000年に引退。
(*2)もあいはるこ──バーチャルアイドル。桃井はるこのクローン人間という設定で、桃井はるこプロデュースにより1997年にデビューした。旧新宿ロフトでライブをしたこともある。
(*3)AceFileくしよし──久志麻理奈と吉川茉絵のアイドルユニット。名作アルバム『5・7・5・7・7』は全曲桃井はるこが提供。
(*4)2005年に、ぱふゅーむ×DJ momo-i名義でシングル『アキハバラブ』をリリースした。
(*5)UNDER17──桃井はるこ(ボーカル)と小池雅也(ギター)の音楽ユニット。2002年結成。通称アンセブ。「萌えソング」を啓蒙するというコンセプトで活動し熱狂的な多くのファンに支持されたが、2004年に惜しまれつつ解散。


【INFORMATION】

●最新シングル発売!
momoi_jk1.jpgTVアニメ『Mission-E』EDテーマ
『Feel so Easy!』
8月27日発売
AVCA-26889
1,260yen(tax in)


●ライブDVD+リミックスCD 2タイトル発売中!
momoi_jk2.jpg2008年4月20日 SHIBUYA-AX
『[Sunday early morning LIVE]@SHIBUYA-AX』
AVBA-26861B
7,560yen(tax in)


momoi_jk3.jpg2007年6月24日 川崎CLUB CITTA'
『[COVER BEST LIVE]@CLUB CITTA'』
AVBA-26860B
7,560yen(tax in)

MOMOI.COM
http://www.momoi.com/

桃井はるこのほめぱげ
http://avexmovie.jp/lineup/momo-i/

桃井はるこ オフィシャルサイト
http://rg-music.com/momoi/

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