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アーカイブス vol.5『山下達郎』

今や日本を代表するポップス職人と呼べるあの山下達郎が、古くはロフトの常連出演者だったことを知る若い音楽ファンは最早少ないのではないか。
 新宿ロフトの軌跡をまとめた単行本『ROCK is LOFT』(このサイト内で通販できます)に寄せたコメントで彼はこんなことを書いている。
「荻窪ロフトと下北沢ロフトが私を育ててくれた“ゆりかご”だった。ロフトの平野氏は、ミュージシャンのチャージ(料金)をピンハネせず、採算はあくまで飲食営業でまかなうという、画期的な発想の持ち主だった」
 この発言の通り、シュガー・ベイブのラストコンサートは荻窪ロフトで行われているし(1976年3月31日)、下北沢ロフトでは“山下達郎シングス・スマッシュ・ソングス”という企画も行われている(同年5月28日)。また、新宿ロフトのオープンセレモニー5日目(同年10月5日)の吉田美奈子/矢野顕子出演時にはピアノ&バック・ヴォーカルで参加もしている。

 そんな山下達郎だが、実は我がルーフトップの表紙巻頭も飾っている。1976年11月発行の通算4号目がそれで、シュガー・ベイブとナイアガラトライアングルVol.1を経て初のソロ作『CIRCUS TOWN』を発表した時期だ。今回はこの貴重なインタビューをお届けしよう。(文責:椎名宗之)

76hyousi.jpg ソロ活動を開始した山下達郎、ニューヨーク、ロスアンゼルスの2箇所で行なわれたレコーディングも滞りなく終了し、発売前から話題をまいている。9月中旬帰国した彼にレコーディング過程を聞いた。(編集部)

──まずN.Yサイドから。アレンジャーのチャーリー・カレロを始め、ミュージシャンは全員名指しですか。
山下:キーボードは違った。キーボードはよく判らないからカレロに任せてパット・リビロットが来た。これが巧くて、絶対弾きまくらないんだけど、たとえば「ウィンディ・レディ」でエレピのトレモロのスピードが丁度初めに来ないようにするんだよ。だからビートの裏で丁度聴こえるようになる。そういう感覚が凄く丁寧なんだ。トレモロのスピードとビートを巧く相殺するようにしてくれるわけ。何も言わなくても、皆それぞれやってるからどんどん録れる。
──サウンドの指定はどうしたんですか。
山下:今回、僕はコンポジションと唄だから、オーケストラでやろうがギター1本でやろうが好きなようにやってくれって言ったわけ。ニューヨークに関しては、メロディ譜とテープだけ先に送っておいて、僕が着いた2日後に始める予定だった。それが、着いた次の日にチャーリー・カレロから電話がかかってきて、打ち合わせをしたい、練習したいって言うのね。だからミュージシャン全部来るのかなと思ってたらカレロ一人だけ来て、ピアノ弾いて唄ってくれ、言いたい事があったら言ってくれ、そうしたら明日譜面書いてくるからって言うんで、詞の内容がどういう事かを説明したわけ。
──カレロのアレンジは、自分のイメージに合ってました?
山下:合ってた。細かい事言えばきりないけど、曲もカレロに合わせて書いたからね。カレロが面白い事言ってたんだよ。君はニューヨークの感じじゃない、シカゴとかデトロイトの感じだって。だからそういう風にやったっていうわけ。
──ニューヨークで絶対日本と違うっていうのは?
山下:出来上がりが早いよ。それに皆ギンギンにプロだよ。ショー・ビジネス・キープね。絶対に本音言わないしね。インクレディブル! 皆それで付き合う。ヒューマン・リレイションとか、そういうのないね、凄いよ。
──出てくるサウンドを聴く限りでは、フィットしてて、バンドで相当やってる連中という気がするんだけどね。
山下:うん。皆その道で十何年やってる人だもん。ジェフ・ミロノフは17年ギターやってるんだって。皆20才台後半だもんね。その中でウイル・リーだけ前半なの。それで、カレロが言うには、お前がウイル・リーを指名したからウイル・リーを呼んだ、それじゃなかったらもっといいの連れてきたって言うんだよ。「サーカス・タウン」でベースとドラムだけ残るところのウイル・リーは良くないって言うんだよね。指名しなかったら、おそらくゴードン・エドワーズを連れてくるんじゃないかな。
──カレロのプロデュースという部分でのミュージシャン設定だったわけでしょ?
山下:そうだよ。最近のカレロはこのミュージシャンばっかりだからね。カレロが一番ビックリしてたのは、日本からフウッと来て自分を指名したという事だね。最後まで何で自分に頼んで来たのか聞いてたもん。
──何故カレロに頼んだの?
山下:あなたのアレンジが好きだからだって言ったの。
──カレロの事はレコードの上だけで知ってたわけでしょ。
山下:うん。今まで日本人で会った奴一人もいないもん。
──カレロは今、どんな仕事をしてるの?
山下:僕がやってる時は、僕とフランキー・ヴァリィ、ジェイアメリカンズのジェイ・ブラックを3つ一緒にメディア・サウンド(N.Yトップクラスのスタジオ)でやってた。だから僕のレコーディングが終わると上へ登ってフランキー・ヴァリィのレコーディングをするというスケジュールね。他にも同時期にたくさん彼のところへオファーが来てるわけ。で、その中からこの3つだけをセレクトしたんだ。僕の場合、運が良かったのと、彼が興味を持ったんだろうね。ライチャス・ブラザースの曲をやって、こんな風にお前はしたいんだろって言うわけ。そうだって言ったらね、僕と君は聴いてる音楽が一緒だって言われた。
──歳は相当違うんでしょ?
山下:違うよ。向こうは37かな。何しろ「ネイビー・ブルー」のアレンジをやった人だからね。トーイズの「ラヴァーズ・コンチェルト」のアレンジとかね。
──アメリカン・ポップって言われるところかな。
山下:もろそれね。クリエーターというよりは、ヒット・ソング・アレンジャーよ。どうやればヒットするか、それに一番頭を使ってる。
──その中で、カレロが「ウィンディ・レディ」をアメリカでリリースしたいと言うの。
山下:うん。じゃ米語にしなくちゃいけないと同行スタッフが言ったら、いや、いいんだって言うんだよね。そこら辺、面白いんだけど。とにかく、向こうは売れたほうがいい、売れたほうが偉いんだから、日本と決定的に違うところだよ。日本では、売れたっていうとコマーシャルだって馬鹿にするところあるでしょ。向こうはコマーシャルを決して悪い意味に使わないからね。
──日本では売れる情況が悪いって事もあるよね、とんでもないものが売れたり。
山下:そうだね。それと一緒にされるのがいやだっていう事から、日本では売れたくないというのが出てくるじゃない。向こうは違う、いいものがあったら、いいものは売れるからね。ビジネスのプロセスが全く違うと思ったほうがいい。そこら辺はギンギンにスクウェアだから。話してても疲れるもん。
──売る為に話をするわけ?
山下:そう。スタッフに対して、お前がこれだけ金を出してくれたら、いいレコードになるっていう言い方だもんね、全部。生き残って行く為にはそれしかないんだよ。リズムセクションに対しても平気で怒鳴りつける。手抜いたら承知しないとか、時間内に上げなかったら承知しないとかね。そうしないと、朝の10時から2時間やって、即、次の仕事なんてできないよ。ウイル・リーなんて普通なら忙しすぎて呼べないんだって。ランディ・ブレッカーもそうね、売れまくってるからね。今回はセッティングが早かったからで、昨日の今日じゃ絶対来ない。
──ロスの事はどう思ってるの?
山下:ニューヨークはロスの事なんて何とも思ってない。人が何やってようと関係ないんだよ。チャーリー・カレロっていうのはショー・ビジネスの世界だから、要するにヒット・ソングを作って売るんだから。カレロはベースから何から全部譜面に書くのね。で、昔はこういう音楽をミュージシャンが判らなかったから、説明するのに時間がかかったって言うわけ。今やっと若いミュージシャン達がそういう事を判ってきて、説明する必要が段々なくなってきてる、これからはもっといい時代が来るだろうって言ってたよ。本質的にいいものを創らないと金にならないから、その為に金を注ぎ込んで、その為に創るっていう型だからね。ニューヨークの緊張感は凄いね、何しろニューヨークのミュージシャンは今の超一流だからさ、ロスのミュージシャンとは眼の色が全然違う。

──ところで、L.Aサイドの方だけど、ヘッド・アレンジは誰?
山下:僕。曲は前にテープで送っておいた。
──ミュージシャンの指名は?
山下:ドラムのジョン・サイターをまず指名して、ベースがあまりよく判らなくて、キーボードのジョン・ホッブスを指名して、ギターを2人指名したんだけど、一人はニューヨークに行ってて、もう一人は引退してカナダに行ってるって言うんだよ。で、ギターがいなくて仕様がないから、ビル・ハウス嫌いだけど頼んだわけ。ベースは適当に選んでもらって、いつも一緒にやってる奴だって来たのが最悪で、ツッパっちゃってて全然ドラムと合わないんだよ。おまけにギターが酷いんだ、滅茶苦茶なの。それで初日、3曲録ったんだけど全然駄目。その日の帰りがけに、コーラスはジョン・リンドンとケニー・アルトマンが来るってサイターが言うわけ。僕はケニー・アルトマンにベースを頼もうと思ってたんだけど、ケニーは絶対ニューヨークに住んでると思ってたんだよね。ロスによく来るけどニューヨークを本拠地にして、今でもニューヨークに住んでると思ってたんだ。それがいるっていうんでケニー・アルトマンを呼んでもらうように頼んだの。前のテイクは全てチョン。
──ニューヨークとミュージシャンの感じは違う?
山下:全然違う。ニューヨークのミュージシャンはスタジオ・ミュージシャンだから来て帰るだけ。一緒にメシ喰うわけじゃないし。ところがロスの連中とは皆一緒にワッとメシ喰いに中国料理店へ行って、ケニー・アルトマンとはかなり話したよ。ケニーはやっぱりロスへ来て2年半しか経ってないんだって。
──コーラスのジェリ・イェスターはどういうわけで参加したの?
山下:ジョン・サイターが言うにはジョン・リンドとケニー・アルトマンだったんだけど、来たのはジェリ・イェスターとケニー・アルトマンだったの。話が違ったわけなんだけど、スタジオにジェリ・イェスターがいるんだよ。ジョン・サイターに、あの人ジェリ・イェスターじゃない?って聞いたら、そうだって言うんだよ。何しに来たのって聞いたら、コーラスやるんだって言うんだよ。あの辺、皆仲間なわけ。だから電話一本で来るんだよね。仲間意識が非常に強くて、仲間以外とは仕事しないしね。N.Yとは全く違うね。
──それは音楽でつながってるの?
山下:そう。以前からニューヨークでやってる連中だしね。
──ニューヨーク、ドロップアウト組なの?
山下:そうだよ。皆、逃げて来たの、ニューヨークから。テクニック的にも特別巧いってわけじゃないし、でもムードはいいんだよ。だから、どっちがいいっていうのは言えないね。やっぱりケニー・アルトマンのベースになったらビシッと音がしまって、全然違うんだもん。
──ロスのミュージシャンは各々スタジオで仕事をしてるの?
山下:あんまりしてないみたい。仕事をするのに各々己のプライドがあって、たとえばジョン・サイターは絶対CMやらない。CMやる奴を馬鹿にするわけ。それと、ニューヨークに対抗意識を持ってるね。僕なんかが今まで日本でやってきたやり方っていうのはロスのミュージシャンのやり方だね、人間関係も含めて。ロスの連中は「また会おう」で、ニューヨークの連中は「さようなら」なんだよ。そこの違いだね。ジョン・サイターが10月、日本に来るんだけど、その時家に遊びに来いって言ったの。そういう関係にすぐなれるんだね。ロスの連中はそういうところ、凄くいいよ。ケニー・アルトマンにしてもジェリ・イェスターにしても、今度来る時遊びに来いって住所書いてきてくれたりして、プロ意識みたいなのが、そういうところでは全然ないんだね。友達という感じでね。

──ところで、日本ではアレンジャーとしての仕事が多い山下さんが、N.Yサイドでは全てを、L.Aサイドでもほとんどのアレンジを向こうの人に任せたのは何故?
山下:僕が影響を受けた音楽って言うか、エッセンスになっている“素”をやってる連中のところへ行ってまで、これをやってくれっていうのはナンセンスだよ。
──フォーマットとしてはそうだけど、“山下のもの”という意味では?
山下:少なくとも曲は僕の曲だし、サウンド・ポリシーを狙って行ってるわけだから。つまり、曲を創った時に、こういうサウンドを創ってくれるだろうという人にアレンジを頼むのが、アレンジャーを選ぶ基本でしょ。だから、そこには僕の必然性がある。昔から、アメリカでレコードを創る時には、プロデューサー、アレンジャーを向こうの人に任せようと思ってたのね。
──それも含めて、かなりの快心作という気がしますが、どうですか?
山下:要するに何が一番やりたいかっていう事なんだけど、たとえば僕が歌手だったら、これで充分成功だったと思う。で、作曲家としてこういうことをやりたかったというのでも充分だと思う、このやり方で。ただ、もっと色々な事をやりたいから、これ1枚だけでは何も言えないわけ。自分の本当にやりたい事っていうのは、そんなに簡単に、1枚や2枚でできるわけないからね。それは日本でやるべきだと思ってる。ただ、自分が作曲してるという興味もあるし、それを自分で唄うという事もあるんだけど、ああいう人達を使ってサウンドを出すにはどういう曲を書いたらいいか、という考え方が一番ドリーミーなんだよ。ついでにそれを自分に乗せて唄えれば最高なんだ。これこそ自分しかできないものだ、というのは全然別。そういうパーソナリティをこのLPに要求する事自体ナンセンスなんだよ。このアルバムがなければ翔べないんだ。

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