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アーカイブス vol.4『増子真二×吉村智樹』(2002年5月号)

ここ最近、Rooftop編集部には多くの感想、質問、要望のハガキやメールが寄せられます。その中でも多いのが、過去のインタビューが読みたい!!というご意見。そこで皆様の要望にお応えして月曜のルーフトップコラムでは順次、インタビューページにはアップされていないものを掲載していこうと思います。今週は2002年5月号Rooftopに掲載された増子真二(DMBQ)×吉村智樹さん対談です。原稿まとめながら再度読んでみましたが、かなりオモシロイ。安西マリアさんの曲が聞いてみたいです。


増子真二(DMBQ)×吉村智樹 ズベ公歌謡の灯を消すな!

0425_3.jpg かつて日本のロック/フォークはあくまで支流だった。音楽界には本流である歌謡曲という大きな太い幹が絶対的な存在としてあり、そのアンチテーゼとしてロックなりフォークなりが生まれた。月日は流れ、いつしか野党は転じて与党となり、今や若者を中心に支持される音楽が市場を席巻する状況である。それは同時に、古き良き歌謡曲の終焉でもあった。歌謡曲とは一体何だったのか? その真髄とは? そしてこの先、歌謡曲的なものが顕れることはもうないのか? あらゆる音楽を熟知し、歌謡曲にも一家言を持つDMBQの増子真二氏とフリーライター/放送作家の吉村智樹氏に、60〜70年代の日本の歌謡曲について存分に語ってもらった。(文・構成:椎名宗之)

歌謡曲の持つ“やさぐれ感”と“いかがわしさ”
吉村:僕は1965年生まれなんですよ。だから60年代前半のことは全然知らないんですけども、今ほど音楽が世の中に溢れてなくて、歌謡曲は基本的に子供が聴いたらアカンものっていうか、世の中を悪くするものだと言われてたと思うんですよ。あの頃、テレビで歌番組を見ると親から怒られてたし。
増子:低俗だとか、そういう理由でね。いわゆる児童唱歌的なものと対極だったですよね。
吉村:今では信じられないですけど、ジュリー(沢田研二)が“オカマ”とか言われてた時代でね。郷 ひろみがデビューした時も、「男なのか女なのか判らない!」とか「気持ち悪い!」とか言われたり。親から見た歌謡曲って、全員マリリン・マンソンみたいなトンデモない奴らに見えてて(笑)。だから、“歌謡曲”って一言で言うけど、実はその当時からJ-POP的なものがあったり、反対に純歌謡曲的なものがあったりとかして。僕が一番強烈に覚えてるのは、ピーターの「夜と朝のあいだに」っていう歌なんですけど、歌謡曲って、夜と朝のあいだくらいにしかかかってないもので、昼間の健全な時間にはかかってないもんちゃうかなぁって思うんですよ。そういう点では、子供のためのロックというか…。
0424_1.jpg増子:フィンガー5とか、あの辺はどうなんですか?
吉村:フィンガー5ってね、便宜上“歌謡曲”と言われてたけど、“J-POP”とか“ポップス”とかいう言葉が当時なかっただけじゃないかと思うんですよね。彼らは越後獅子の子供らみたいに、子供たちが酷使されてる被虐的な姿を大人が楽しんでたのかなという気もしますね。僕らが小学校の時にフィンガー5は全盛期で、晃君が男の子なのか、女の子なのかなんて話題になったりね。そう、歌謡曲って、やたら「コイツ男なのか、女なのか!?」っていう言われ方をされることが多くて。
増子:わざとなのかは判らないけど、性的な倒錯みたいなところは匂わせてましたよね。僕は世代的にもうちょっと後ですね。1969年生まれで、70年代にどっぷり子供時代。だいぶ開放的にはなってたと思います。一番多感な小学校の高学年から中学生の頃はもう(松田)聖子ちゃんの時代で、歌謡曲がピークの頃ですけど、オンタイムの歌謡曲にはそんなに興味がなかったですね。僕は古本・古道具の子供だったから、そこから掘り下げていく感じでした。1枚=30円のレコードを見つけては、そのB面を一生懸命聴いてみたりして。例えば安西マリアだと、その後ろにやさぐれたバンドが演奏してるわけですよ。彼らはなかなか勉強してて、作曲の先生から与えられた歌のなかでもの凄く変なアレンジをやってたりする。そういうところの面白さにくすぐられましたよね。
吉村:多分ね、親から「聴いてはいけない!」って言われる歌謡曲って、ピンク・レディが終止符だったと思うんです。80年代に入って松田聖子がデビューして、親も許すようになった。その時点で歌謡曲じゃなくなった気がするんですよ。僕が昔の歌謡曲でよう覚えてるのはね、中条きよしの「うそ」、三善英史の「雨」、欧陽菲菲の「恋の追跡(ラヴ・チェイス)」…みんな気持ち悪いんですよ(笑)。
増子:新宿界隈の酒場の匂いですね(笑)。何とも言えない“いかがわしさ”というか。
吉村:うん。歌謡曲ってそういう“いかがわしい”音楽のこととちゃうかなぁ。80年代に入ってからの歌謡曲と呼ばれるものって、実はJ-POPSやポップスだと思うんですよ。“J”という言葉がなかったがために(笑)。
増子:ピンク・レディを境にして、歌謡曲ってディスコティークやらAORやらと巧みに歩調を合わせていくんですよね。それ以前のものになると、元々ジャズをやってた人とか、ハワイアン・バンド出身の人とかが楽曲の芯を担ってた。そんな人が歌謡曲を作ると、やっぱり無理があるから面白いんですよ。
吉村:歌謡曲が決定的に歌謡曲じゃなくなったなと僕が思ったのは、『BOMB!』に載ってた松田聖子のインタビューを読んだ時なんです。「チェリーブラッサム」という財津和夫さんが作曲した歌で、最初に上がってきたのが気に入らなくて、書き直してもらったという話で。「80年代ってこういう時代なんだな」と思いましたね。歌手は本来“唄わされてる”人たちで、傀儡だったと思うんですよ。夏木マリは多分、「絹の靴下」は唄いたくなかった筈ですよ(笑)。自分の意見を主張するのは全然悪いことじゃないんだけれども、その時点で歌謡曲という言葉はフィットしなくなった。
増子:自己表出によって、よりポップス的になったわけですね。アーティスト性みたいなものに対して意識的になったんでしょうね。
吉村:もし今、歌謡曲的なものがあるとしたら、それはパロディでしかないんですよ。松浦亜弥ってアイドルのパロディやから。今はホリプロが<タレントスカウトキャラバン>でグラビア・アイドルを探してる状況ですから。
増子:歌は商売にならんのでしょうね。

郷 ひろみ「花とみつばち」×西城秀樹「ジャガー」
0425_01.jpg──今日はお2人が「これぞ歌謡曲!」というお気に入りの7インチをお持ち頂きましたが、まずは真二さんから。
増子:ロック・テイストのある歌謡曲を持ってきました。まず、この郷 ひろみ。これはいいですよ! フラワー・ロックにサイケ、それにノーザン・ソウルっぽいキビキビしたリズムの要素もある。管とストリングスの音が、角が取れててきらびやかさがある。割とブリティッシュ・ロックに近い。湿った響きを得意としてます。この頃の郷 ひろみは恰好いいですね。デヴィッド・ボウイっぽい、メカニックな趣もあるし。
吉村:郷 ひろみってメチャクチャいい曲多いんですよね。
増子:“やらされてる感”もバッチリ! ジャケから察するに、そんなに楽しそうじゃない(笑)。ゲイ・カルチャーの匂いもありますしね。
吉村:それなら僕は(西城)秀樹で。秀樹は全部大好きなんですけど、特にこの「ジャガー」。
増子:この曲、語りの部分が凄いですよね。
吉村:<君が死んだら俺は死ぬ/でも俺が死んでも君は死ぬな>。これ、真理やと思うんですよね。
増子:ここ、野太いヤング声で急いで喋るんですよ(笑)。
吉村:もう死ぬんじゃないかって思うような歌唱法で。秀樹は洋楽好きで、「スピニング・トゥ・ホールド」とか「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」とかもカヴァーしてますよね。
増子:(キング・)クリムゾンまでやってますからね。しかも「エピタフ」(笑)。ムチャクチャいいですよ! 「エピタフ」はピーナッツあいざき進也までカヴァーしてます。ピーナッツのは原曲を遥かに凌ぐ出来で、「エピタフ」といえばピーナッツですよ!
吉村:秀樹は「黒い炎」も凄くいいんですよ。「Y.M.C.A.」以降の秀樹も好きですけど、歌謡曲ではないですね。「薔薇の鎖」とか、あの辺がいい。

安西マリア「早いもの勝」×渚 まゆみ「奪われたいの」
0425_02.jpg増子:続きまして、これなんですが…安西マリアの「早いもの勝」。ジャパニーズ・ファンキーなバックをガンガンに堪能できます。素晴らしいです! この人は香水の匂いが異常だったらしいですよ。マメ情報ですけど(笑)。
吉村:下の名前がカタカナってだけでいかがわしいですね。安西マリアはTVで見てたらさすがに親から怒られましたね。
増子:不良っぽい、ハスッパな感じだったんですかね?
吉村:歌を唄って更生しようとしてるように見えましたね。
増子:この曲は…作曲が邦さん(鈴木邦彦)ですね。判ります。アレンジが声質に合ってて、下品な感じで最高です。<奪いとるなら今よ/何かするなら今よ>って歌詞も挑発的で。彼女がどういう存在だったかがこの曲に凝縮されてる。
吉村:じゃあ僕は…渚 まゆみ。浜口庫之助の奥さんです。歌謡曲の作家のなかで一番好きなのは誰かと訊かれたら、僕はハマクラさんを挙げますね。<見せるのは いやいや/のぞかれたいの/見せれば あなたは目を/つむっちゃうじゃないの>…って、完全なエロ歌謡です。歌声が可愛いんですよ。ハマクラさんって凄く上質なエロを書ける人なんです。近頃はセクシーの捉え方が幼稚になってると思いますね。
増子:露出とエロスが簡単に結びつくわけではないんですよね。当時は淫靡な雰囲気や大人の色香っていうものに凄く意識的でしたよね。ハマクラってハワイアン・バンド出身にしては和風でスケベなメロディを書ける人で、いわば大先生ですから、70年代の初頭にシンガー・ソングライターやロックをやる若者から権威主義的なものの矢面として大バッシングされるんですよ。
吉村:ジャックスの「ロール・オーバー・ゆらの助」って、ハマクラさんがモデルですよね。
増子:あと、テスコとかエレキ・ギターの開発にも携わってる。
吉村:元々ギタリストなんですよね。『自作自演集』とかも出してる。“自作自演”って、本人が悪いことしてるみたいで凄く面白いですけど(笑)。
増子:先生が自分自身で唄うところに希少性があったんですね。
吉村:ハマクラさんのエロ歌謡で一番ヒットしたのは多分「黄色いさくらんぼ」だと思うんですけど、それも自分で唄ってるんですよね。本人が唄うと、もう本当にただのセクハラ・オヤジなんですよ(笑)。

B・B・S「恋のチャンス」×中尾ミエ「恋のシャロック」
0425_03.jpg増子:黒いのをひとつ。“ビューティ・ブラック・ストンズ”、略してB・B・S! この人たちは『不良番長』シリーズにも出演してました。これね、スリーヴにあるコメントなんですけど、「TVに出られる嬉しさと、日本の人に笑われやしないかという不安で何だか口で言えない様な気持です」って(笑)。当時で言うなら“合いの子”ですよね。「黒んぼ黒んぼと言われながら12歳の時からバンドガールをしてドラムスを勉強し、誰にも相手にされず9年目に芸能界入り出来たことはまだ信じられない位です」。これマズイでしょう(笑)。歌謡曲の悲しい部分が表出してますよ。だって、“ドラムスを勉強し”って一切歌に活かされてないじゃないですか(笑)。
吉村:この曲、ポピーズもカヴァーしてますね。“合いの子”って、B・B・Sのおかげで流行ったんですよ。日本がハーフに憧れた時期ってちょっとありましたよね。
増子:ゴールデン・ハーフは上クラスですけど、このB・B・Sみたいに明らかな二世とか、僕らが子供の頃だと、ルー・フィン・チャウとかそういうのが結構いた。
吉村:ルー・フィン・チャウってボート・ピープルですよね。
増子:そういう人たちがどういう経緯でデビューしたのかは判らないけど、内実は恐ろしいことになってると思う。このB・B・Sは歌謡曲の歴史のなかで触れてはマズイ部分なんですけど、避けては通れないですね。曲自体は恰好いいし。このジャケットの屈託のない笑顔からは想像できない、恐ろしい転落があったと思いますよ。
吉村:同じ黒いのだったら僕はこれ…中尾ミエ。“シャロック”とは“シャッフル”と“ロック”を組み合わせた造語ですね。この曲、中尾ミエさんにとってはかなり冒険してます。ジャケットがいきなりサイケデリックですし。ファズとかガンガン鳴ってて。言うたら、中尾ミエさんには苦しくなってる時代ですよ。GSの波が来て、いつまでも明るい三人娘ではいられないという。
増子:こういうのって、ジャズ+ポップスみたいな、いわゆる『シャボン玉ホリデー』みたいで面白いですけどね。
吉村:この曲を聴いてると、漣 健児(訳詞家)の時代の終焉という感じがしますね。この曲が発売された頃って高度経済成長期で、水銀・コバルト・カドミウムとか暗い世相が反映してるんですよ。全然明るい曲じゃないんで。
増子:そういう不況の影も見えますね。ただ上昇していこうっていう意識とはちょっと違う、カウンター・カルチャー的な考え方の台頭ですよね。それまで対抗する文化って余りなかったですからね。

ガールズ「野良猫」×中山エミ「でんわ」
0425_04.jpg増子:ジャケットの左端に写ってるのは、のちのジューシー・フルーツのイリヤですね。B面がランナウェイズの「チェリー・ボム」(表記は「チェリー・ボンブ」)。女がロックをやるという解釈が当時はこんな感じだったんです。恐らく自分たちでは全く演奏してないですよ。当時で言う“ズベ公”ですね。曲の内容的には、本家の「チェリー・ボム」からは遥かに遠いロック歌謡です。この人たちも恐らく集められてるでしょう。
吉村:森田日記の「乙女ちっくブギ」とか山川ユキの「新宿ダダ」とか、ズベ公歌謡みたいのが一時期流行ったんですよね。山川ユキは“初代・歌舞伎町の女王”ですね。椎名林檎の「歌舞伎町の女王」の歌詞に、<十五になったあたしを/置いて女王は消えた>ってありますけど、あれは僕、消えた女王って山川ユキとか森田日記だったんじゃないかと思うんですよ(笑)。
増子:この<もっとお飲みよ/あたしのおごりさ/ちょっと映画で裸になったのさ/別段どうってことないねぇ>って、恰好良すぎるでしょう! 実際、こんな女どこにいるのかな? っていう。
吉村:活動の後期には、絶対に百貨店の屋上とかで唄わされてたんでしょうねぇ。氣志團とかロマンポルシェ。みたいに、今の時代に確信犯でもう一度やる人はいるじゃないですか。でも女の人ではいないんですよね。だから今、女性でこういうことをできる人がいたら、絶対に人気が出ると思うんですよ。
増子:ある程度汚れないとダメですからね。その辺が女の人には辛いんじゃないですか。やっぱり価値の置き所というか、志向の矛先がデザイン学校っぽいんですよ。決して悪くないんですけど、美大とか専門学校生的なものというのは、どうしてもサイドB的な恰好良さを求めてしまうんですね。でも、サイドAのズッコケたところが実は一番恰好いいんですよね(笑)。包括的な視点がないと、なかなか恰好いいなと思えないんですよ。
吉村:MCも巧くないとダメですね。恰好悪いことを一杯言ってほしいじゃないですか。
増子:まず、ライヴで“あたい”って言えるかどうかですね(笑)。なかなかスラッとは言えないですよ。演者としての資質も問われますね。
吉村:じゃ次はこの中山エミを…全然ヒットしてないんですけど、女の子のどうでもいい日常生活を描いてます。ジャケットも歌詞も貧乏臭くて大好きな曲で。<もしもし これからジュンコと/お部屋訪ねて いいかしら/あの子なんだか 泣いてるの(中略)十二時頃につくわ>…夜の12時に行くのかよ? っていう(笑)。僕はこれ、ファンシーケース・ロックって呼んでるんですけど(笑)、ジッパーが付いてるビニールのファンシーケースのなかで演奏してるみたいなブラス・ロックで、もの凄くセコイんですよ。僕はこの曲をいつもDJでかけてます。
増子:この世界観は、フォークが歌謡曲に根付いた頃のニュアンスですね。日常性を歌詞に反映しているという。歌謡曲と接近したのは、フォークでももうちょっとチェリッシュ的なものですよね。
吉村:あと、小坂明子さんの「あなた」じゃないですかね。
増子:ああ、ヤマハ的な。のちにニューミュージックと呼ばれるようなものですね。
──太田裕美とか、立ち位置が微妙な人もいるじゃないですか。
増子:太田裕美はニューミュージック的な要素を採り入れて成功した例なんじゃないかな。
吉村:太田裕美って、成功しすぎたから歌謡曲って呼ぶと違和感があるんですよ。余りにも「木綿のハンカチーフ」が名曲なので、歌謡曲っていうよりはスタンダードっていうか…。
増子:そうですね。与えられた曲を卑屈に唄う歌手が多いなかで、太田裕美は歌手魂を持ってきちんと唄いこなす人なんですよね。

カルメン・マキ「ノイジー・ベイビー」×フラワーショー「幻のブルース」
0425_05.jpg増子:このカルメン・マキはムチャクチャ恰好いいですよ! カヴァーしたいくらいに好きです。この曲はクニ河内の変態性が爆発してるんですよ。どこがサビでどこがAメロか判らない。で、変なファズのギターが出てきて急激に曲が終わるんです。さすが元ハプニングス・フォー!
吉村:カルメン・マキさんって常に評価されてるから、再評価されないんですよね。なんかも正にそうで、延々評価されてるから再評価の波が全然来ないんですよ。
増子:クニ河内は演劇での実験的な音楽とかも凄いです。あと、この人とジョー山中が組んで作った『
切狂言』っていうアルバムも恰好いい。大好きです! 当時、カルメン・マキってどういう位置付けだったんですかね?
吉村:“ロッカー”っていう括りだったと思いますけどね。フォークと呼ばれてた時期もありましたけど。
増子:浅川マキとか、あの辺と扱いは一緒だったんですか?
吉村:何て言うのかな…グラデーションですよね。石川セリがいて、りりィ、浅川マキ、カルメン・マキ…と、段々と濃ゆくなっていくような。歌謡曲に着地した人は丸山圭子とかですね。
増子:そうかそうかそうか。しばたはつみとかは?
吉村:彼女はクラブ歌手みたいなイメージがありましたね。最初は、はつみかんなと名乗ってポップスを唄ってましたよね。
増子:70年代のシンガー・ソングライター・ブームの直前くらいって、位置付けのはっきりしない人が余りにも多いですよね。
吉村:TVに出てなかったから判らない部分もありますよね。藤 圭子さんがデビューした時のことをよく覚えてるんですけど、片手に人形を持って唄ってたんですよ。それはカルメン・マキさんに通じるアングラな匂いがしましたね。歌謡曲って、アングラなものや文化人方面と接触する時期があるんですよ。寺山修司さんや唐 十郎さんが作詞をしたり。80年代に入ってはっぴいえんど一派が歌謡曲に入ってきて、「これならフィットする」みたいな感じになった。だから歌謡曲はそれまでに色々と試行錯誤してたんだと思います。
 …じゃ、僕はシメに藤本卓也で。3枚ある「幻のブルース」のなかで一番好きな、フラワーショー・ヴァージョンを。藤本卓也のサイン入り。サインが入ってるのを見せたかっただけなんですけど(笑)。
増子:ブラス・ロックですよね。結構、当時の歌謡曲にブラス・ロックの要素って採り入れられてるんですよね。
吉村:あと、当時のスタジオ・ミュージシャンってジャズの流れの人が多かったんで、管楽器吹ける人が凄く多かったんじゃないかな。東芝のアトランティックのレーベルが、そういう録音に長けてたということもありますね。
増子:海外でも、日本のオーケストレーションの録音は評価が高いんですよ。アジアの歌謡曲を聴いて喜んでる外人は、特にイギリスなんかに結構いる。やっぱり東芝のブラスのファンは多いです。
吉村:演奏も、歌番組は生でしたからね。ニューハードとかニューブリードとか。
増子:いわゆるバンドマスターがまだ食えてた頃ですね。
吉村:あと、舌禍事件で干されたダン池田。あんな胡散臭い顔の人がTVに出なくなった時点で、歌謡曲が歌謡曲ではなくなったと思いますね(笑)。
増子:今の時代に比べて、プロのミュージシャンって凄く狭き門だったじゃないですか。ドリフのバックバンドとかで片手間に食い代を稼いでたつもりが、徐々にそれが本業になった人って多いと思うんですよ。そういうバンドマンはガッツがありますね。当時のドリフのビデオを見ると、山本リンダの後ろで顔を黒塗りにして張り切ってる人とかいますよ。やりすぎ(笑)。
吉村:沢田研二さんが言うには、数ある歌番組のなかで一番演奏が巧いのは『8時だョ!全員集合』のバックだったって。相当な凄腕が揃ってたんだなぁと思いますね。

松浦亜弥の対抗馬に“ズベ公ロック”を!
──今後、“歌謡曲的なもの”はもう出てこないですかね?
吉村:確信犯しか出てこないんじゃないですか? クレイジーケンバンドみたいに。全くのナチュラル・ボーンな人は出てこない気がしますね。
増子:予め用意された芸能のシステム自体が窮屈ですからね。誰かの先生の下に付いて修業をしても、強制力が薄いでしょう。だから当時は、歌手であるという意識は相当高かったと思いますよ。芸事に対する真摯な姿勢があったと思う。
0425_2.jpg吉村:例えば、エイベックスからデビューしたら“アーティスト”って言われちゃうわけじゃないですか。でも自分で曲を作ってるわけでもないし、“アーティスト”という言葉に責任が持てない。いっそ“歌手”って言ってくれたほうが楽、みたいな。
増子:やっぱりパロディ的なものとか、予め判ってやる以外は出てこないでしょうね。ダークサイドを抱えた歌謡曲というのは捻出するほかないでしょう。スター性が身近なものになってること自体がもうダメですね。やっぱり『アストロ球団』みたいに“超人がスターである!”っていう風にならないと(笑)。誰かやってくれないですかね、“ズベ公ロック”をね。
──いっそのこと真二さんのプロデュースでどうですか?
増子:ああ、やるよ! ガンガンやるよ! 「オマエは明日から自分のことを“あたい”と言えよ!」とか、何か知らんけど「バーボン呑みなさい!」とか指導します(笑)。
吉村:対照としてブリブリのアイドルがいないと成り立ちませんよね。ネガとポジの対極の形がないと。松田聖子の一方で中森明菜がいたり、新御三家のキャラクターが3人とも違ったように。
増子:じゃあ今しかないですよ! 松浦亜弥の対抗馬として“ズベ公ロック”を!
吉村:“裏・松浦亜弥”とか、そのままの名前で。
増子:これは我々の手でズベ公を探しましょう! やっぱり北関東かな?(笑)
吉村:西川口とかいいんじゃないですか?
増子:合皮の真っ赤な革ジャン着てる奴がいいですね! 裏地が赤で、キルティングになってんの。で、何かよく判らないけど“SHERIFF”とか書いてある星のバッチが付いてたりして(笑)。そういう感じが必要ですね。見たこともないようなスリムのズボンを穿かせてね。
吉村:15歳のくせに、恋愛論とかごっつい人生を語ったり。タバコ吸ってるのを見つかっても、絶対に謝らない(笑)。
増子:でもズベ公だから、ドラッグへは行かない。タバコと酒だけ。
吉村:20歳になったら「タバコを止める」と言い出す(笑)。あと、やたら義理人情を重んじてたりする。
増子:エピソードは一杯作れますよねぇ。バッチリなんだけどなぁ。『Rooftop』で募集しましょうよ!
吉村:「“秀樹の妹”募集!」じゃなくて、「“松浦亜弥の敵”募集!」でね(笑)。
(2002年4月15日/新宿・らんぶる にて)

PROFILE
DMBQ_jkt01.jpg●ますこ しんじ:過剰なまでのライヴ・パフォーマンスとサイケデリックな衣装で観客の度肝を抜き、凄まじい音圧でヘヴィ・ロックを鳴らすDMBQのVo&G。あらゆるジャンルの音楽に精通する上にサブカルチャーへの造詣も深く、執筆業でもその才能を遺憾なく発揮している。最新アルバムは共に米国盤仕様の『The Essential Sounds from the Far East』と『Esoteric Black Hair』。
DMBQ OFFICIAL WEB SITE◎http://www.dmbq.net/
●よしむら ともき:フリーライター/放送作家。『テレビライフ』『BUBKA』『マンスリーよしもと』など連載多数。『VOWでんがな』『まぬけもの中毒』『音楽誌が書かないJポップ批評』など著書&共著も多数。高円寺周辺のDJイヴェントでもディープ歌謡の皿を回す才人。
吉村智樹責任編集『日刊 耳カキ』

Live info.
■DMBQ
<SHINJUKU LOFT 6TH ANNIVERSARY "RHYTHM OF FEAR">

5月21日(土)新宿LOFT
w/ the原爆オナニーズ / MASONNA
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET: advance-2,300yen / door-2,800yen(共に1DRINK代別 500yen)

■吉村智樹
<中央線だよ全員集合!委員会 presents「〜第3回 高円寺“住めば都”ビギナーズ入門講座 その1〜」>

5月26日(木)新宿百人町NAKED LOFT
【ホスト】テリー植田(高円寺フリーペーパーSHOW−OFF編集部)、他
【出演】吉村智樹(高円寺在住ライター、『VOWやねん』著者)、いざまん(『あたしナツコ。高円寺の女』著者)、高円寺在住有名人ブッキング中!!
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET: 1,000yen(1DRINK代別 500yen)

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